弱者の地

(発電所跡)

島の北東斜面のふもとに、島の電力をまかなっていた発電所の跡がある。サイクリングで通り過ぎる人以外には余り観光客も来ない、ひっそりとした場所である。

花畑
発電所の近くには、四季折々色々な花が咲いている。発電所なのだから毒ガスを直接製造・貯蔵していた訳ではないだろう、と思ってしまいそうな光景である。


しかし実際は違う。ちょっと写真が悪くて申し訳ないけど、ここも立ち入り禁止の砒素区域である。見た目は物凄く綺麗な場所なのだ。そのギャップが中々自分の中で消化できないのを感じる。
(勿論写真は区域外から望遠で撮っている。立ち入らないように。)

発電所跡の脇

ちょっと小さいが、右にポツンと小さく見える白いのが兎である。人間が毒で立ち入れない所で、兎が無事に暮らせる訳もない。実際、この近辺には緑が多いにも関わらず、兎は少ない。



発電所入口ゲート。山頂の砲台跡と並んで、島で最も幽霊の出そうな場所である。

禿げた山に暮らす
発電所の少し北に小山がある。ここも立ち入り禁止であるが、小規模なワレンがある。大抵の個体に多かれ少なかれ障害があり、まるで人間社会の未来図を見るかのようだ。

まだかなり若いと思われる個体。警戒心が強いが、それでも人間が敵ではない事は心得ているようで、しばらく観察して安心すると寄って来る。



近くで見ると、どの兎も先がそれほど長く無い事が分かる。この子は腹水がひどい。やりきれない気持ちになる。全ての兎を丸ごと別の無人島に移したい衝動に駆られる。何か手段は無いものだろうか。



年長の個体。見た所比較的健康そうな子であった。



人間に近寄るのも早いが、逃げるのも早い。生存が厳しい事を物語っているのだろう。

折れた足

原因は分からないが、右後足が折れて外側に90度曲がっている。最初は気の毒に思えたのだが、なかなかどうして、強い子であった。群れでもかなり上位を占めているらしく、あげた人参を口にくわえて走り回る姿は逞しかった。



走る
人間が来た時、餌を求めて走り寄って来る時の真剣さは島のこの区域ならではのものである。他の兎よりも早く貰おう、という気迫?のようなものすら感じられる。


でも所詮は弱い群れの兎、体格も貧弱なので走るのは決して早くはない。

裸の岸辺

発電所からほんの少し坂を下ると海に出る。島の南側と違って、芝も草もほとんど生えて無い。水路には雨の日以外には一滴の水もない。一体こんな所で彼は何をしているのだろうか。

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鹿川 伊知郎(Ichiro Shikagawa <shikapon@jiru.com>)
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